隣の先輩

 それぞれの道を歩んでいる。それが当たり前のことだって、分かっている。


 学校は楽しい。でも、時々先輩がいない学校や家を感じると、心にぽっかり穴があいたような寂しさがある。


「今日はまっすぐ帰らないとダメだよ」


「帰るけど、どうかしたの?」


「愛理。あんまり言うと、後から怒られるよ」


 咲が愛理を諌めるように言っていた。


 誰に怒られるのか、疑問に思ったけど、その聞くタイミングがつかめなくて、彼女達の後姿を見送って家に帰ることにした。


 寂しくても、幸い毎日寂しさで泣き崩れることはなかった。


 そのとき、携帯が青空に向かって音楽を奏でる。


 携帯にはメールが届いていた。そのメールの主は佳織さん。


 最近は宮脇先輩のことを佳織さんと呼んでいる。それは本人から名前で呼んでほしいと言われたから。


 本人から呼び捨てでもいいとは言われたけど、さすがにそれは気が引けた。


 メールに記されていたのは「さっき帰ってきた」というものだった。


 夏休みになったので、家族が心配で早めに帰省したらしい。


 以前話をしていた佳織さんの心配は当たっていて、弟さんは自分の嫌いなものは極力調理をしないということをお兄さんから聞かされたらしかった。


 それで夏休みになって、比較的すぐの帰省となったようだ。


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