虹の橋
一抹の思い
空も低くなった。
もう秋が来たんだと実感する。

バイト先へ行くのに通ってる馴染みの大通りが
いつもとは少し違ってみえるのも、
きっと気のせいじゃない。


ナナカマドの実がキレイに色づいていて

その鮮やかな赤が
やけにこの世界から浮いていた。


「志保ちゃん!どうしたの?そんなとこで?」


急に声をかけられて
ハッと振り返ると、
同じバイト先の麻由子が不思議な顔をして立っていた。


「あ、麻由子。ううん、たいしたことじゃないんだけど。ちょっとね。」

麻由子は大きく黒目がちな瞳でじっと見つめ、

「またぁー!そうやって志保はいっつも隠すんだからぁ!」

そう言って、少し口をとがらせる。


長身の割に童顔のせいなのか、すねてみせても

麻由子がすると
本気に見えない。

そんな彼女を見て
私はプッと吹き出した。

「あはは。そんなことないって!ただね、考えてたの。もう秋だなぁって。」


その言葉を聞いても
麻由子はまだ怪訝そうな顔をしているので、
私はまた吹き出しそうになった。

本当に素直だな、麻由子は。

「ほらっ、早くお店行かないと間に合わないよっ。急ごう!」

さすがにその言葉には素早く反応し、

「やばっ。あたし、今日遅刻したら店長にクビだって脅されてるんよー!」


言うと同時に麻由子は走り出した。
私も、その後を追う。


そうやって日常がまた
今日という日も飲み込んでいった。

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