キョウアイ―狂愛―
しかし、無情にも終着点は迫っていた。
クレア達が下って行った先は崖になっており、その下は急流の川だった。
二人は逃げ場のない所へ追い込まれた。
異形の化け物達が「フーッ」と低い唸り声をあげ、馬を威嚇する。
ジリジリと後退するが、もう後がなかった。
ジキルは腰に掛けていた剣に手をおく。
その時、クレアがふいに馬からひらりと飛び降りた。
「ばかっクレア」
ジキルは慌てて馬から飛び降りクレアに手を伸ばすが、その手は払いのけられる。
そこでやっとジキルはクレアの様子が違うことに気付いた。
凛と前に迫るリドル家の召使い達を見据えたクレアは、威圧的に言葉を放つ。
「このような狡猾な追尾がリドル家の直系である我、クレア・リドルに対するお前達リドル家の末裔のやり口か?」
威厳に満ちた高位の者の詰問に召使い達は怯んだ。
リドル家の者にとってサイファの命(めい)は絶対。
その命により追ってきたが、クレアとてサイファに続く権威である事に違いはない。
今までの無自覚なクレアとは異なる態度で、このように堂々と権威を振りかざされると召使い達が戸惑うのも無理はない。