キョウアイ―狂愛―




しかし、ヴァンパイアの弱点を知ったクレアは、マイメイの心に渦巻く、疑心に気を向ける余裕はなかった。




サイファとの間にわだかまりの無くなった(と、思わせている)今、いつリドルの屋敷に連れ戻されるか知れない。






(その前に準備を済ませなくては……)




クレアは、胸元に光る銀のロザリオに手をかけた。




「ねぇ、エミリーさん、お願いがあるんです」




サイファから贈られた高級な宝石を、幾つか袋に入れて、城の召使いに持たせる。







数日後、クレアの元にこっそりとエミリーから頼みの品が届いた。







宝石を売った金で買った小さな銃と、



ロザリオを溶かして作られた2発の銀の弾丸。






「ありがとうエミリーさん。
くれぐれもこの事は、内密にお願いしますね……?」



エミリーの懐には、銃を買って余った金と、更に美しい髪飾りが。







これで用意は整った。




クレアがそう考えた頃、偶然にも



幸か不幸か、




領主アルザスはサイファにクレアを屋敷に戻す許可を与えたのであった。









< 152 / 237 >

この作品をシェア

pagetop