キョウアイ―狂愛―
「ただ、私達にも思わぬ弱点がございます」
「……弱点?」
クレアの鼓動が早くなる。
「銀の弾丸ですわ」
マイメイはゆっくりと人形のように口を開いた。
「銀で作られた弾(たま)は、私達の身体を事もなく貫きます」
(銀の弾丸)
クレアは頭の中で繰り返す。
「そればかりは、いかにリドルの純血のサイファ様でも抗うことは出来ませんわ。
ただ……、
銀の弾丸なんて、ヴァンパイア退治でも行われない限りは、この街に出回る事もないでしょう……」
「そう……恐ろしいわね。ヴァンパイア退治なんて……」
クレアは、大袈裟に驚いてみせた。
「そうならぬよう、注意深く生きてゆくのみですわ」
静かに答えるマイメイ。
「クレア様も自覚をお持ちになって、気を引き締めてお過ごしくださいませ」
「え、ええ……分かったわ」
押し付けるような忠告に戸惑いながらも、クレアが返事を返すと、マイメイはにっこりと微笑んだ。
その顔は人形のようで、可愛らしくも何を考えているのか、やはり読み取れなかった。