キョウアイ―狂愛―
「クレア様。お目覚めになってくださいませ」
いち早く火事の兆候に気づいたマイメイの機転により、クレアはサイファの予測通り、部屋を連れ出されていた。
長い廊下を濡れた布を口元にマイメイに急かされ歩く。
―――どういう状況なの!?
頭がはっきりしない。
「お急ぎください。クレア様」
それでもマイメイの声に従ってきた。
(……そう言えば)
「…………サイファは?」
前を歩くマイメイがその名にピクリと反応して止まった。
ゆっくり振り返るマイメイは、大げさな反応に反して顔には表情がなかった。
「侵入者が現れた為、中庭に出向かれましたわ」
淡々と述べる。
「クレア様のお目覚めになる少し前の事です」
「……ど、どうなったの?」
クレアに緊張が走る。
しかし、頭は依然はっきりしないままだ。
「分かりません。私(わたくし)が受けた命は、あなた様の警護ですから」
マイメイの瞳に一瞬、寂しげな色が浮かぶ。
「…………あたし……、戻らなきゃ……」