キョウアイ―狂愛―
クレアの白い首に牙が差し込まれ血が噴き出す。
それでも記憶の中のシアンは親切で優しかった。
逃げ続ける為に彼を利用した。
―――だから我がお前を人に戻そう
「払えうる限りの敬意だ」
パンッ
弾けるような音が鳴り響き、硝煙が火事の煙に混じった。
クレアの髪が衝撃でふわりと空に舞う。
シアンはゆっくりクレアの首に食い込んだ牙を抜き取った。
「……ク…レア」
母親を見つめる子供のように化け物は首を傾げる。
「シアン……」
辛そうに眉をしかめるクレアの手は、しっかりとトリガーを引いた銃を握っていた。
シアンの左胸からは血が勢いよく噴き出していた。
「……ゆっくり眠れ」
クレアの手が伸びて優しく頭を撫でると、
シアンはそのままゆっくり後ろに崩れていった。
―――求メタモノハ、血デハナカッタ……
シアンは意識の途絶える前のほんの一瞬、自分の奥底に眠る人間らしい感情に気づいた。
――キット……オレハ
――モウ一度、会イタカッタダケダッタンダ……
―――君ニ
倒れゆく自分を真っ直ぐに見つめるクレアの瞳には慈しみが溢れていて、
シアンは満たされたように目を閉じると、その生を終えた。