キョウアイ―狂愛―
―――サイファ
もうすぐで中庭だ。
お前に会えるだろうか……?
息を切らしながら、定まらない視線で階段を降りてゆくクレアは、踊り場に自分を阻む存在がある事に気づいた。
それは血溜まりと熱気の中、静かに立ち、己を見ていた。
「クレア……クレア」
右目から血を滴らせたクレアの二倍程もある化け物。
ブツブツと名を連呼し、ゆっくり手を伸ばす。
「シアン……」
虚ろな瞳に変わり果てた男を確認した。
「クレア……血……、早ク、君ノ血ヲ……」
クワッと開けた口に鋭利な牙が光る。
シアンは身体を折り曲げクレアの首元に口を近づけた。
――シアン……お前は探究心が大きすぎたのだ。
クレアはそっと目を伏せる。
街を離れた二人は色々な村を転々とした。
シアンはやがて、クレアが歳を取らない事に気づいた。
それから二人が転々とする村では、よく行方不明者が出るようになった。
シアンが人をさらってはクレアに生血を捧げていたのだ。
そして、クレアの血をシアンは飲み続けた。
それらはクレアの意識のない間に行われ続けた。
結果、シアンの成長速度は、クレアからすれば僅かなものに過ぎないが、他の人間と比べ遥かに遅れていった。