キョウアイ―狂愛―




すぐにでも部屋を出て行きたかったが、



(でも待って……)


マイメイが今しがた部屋を出て行ったばかり。




――一度しくじれば、ここから逃げ出すのがより困難になる。




(明け方まで待とう)








クレアは、


計画通り空が白け始めた頃、ひっそりと窓から抜け出した。




クレアの走って行く後には、壁に、シーツやカーテンを結んだロープ状のものが垂れ下がっていた。






クレアは裸足のまま馬小屋に向かう。



(馬に乗って町まで逃げよう)





しかし、馬小屋の近くで運悪く男に見つかってしまった。




「そこで、何をしている?」



一族の中でも女好きで知られるこの男は、夜にこっそりと町に降り、存分に遊び耽って、今また戻って来たところで、


そこへ現れた、裸足に寝間着姿の不振な人物に、男は、持っていたランプを向けた。



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