キョウアイ―狂愛―




「……ごふっ」



クレアの血を貪っていた男は口の中の血を吐き出す。
クレアの横顔にピチャリと血飛沫がかかった。


男はそのままドサリとクレアの上に倒れ、




「お楽しみ中悪ぃね〜」


「わぁ、コイツ違うぜっ女の血を飲んでたんだっ」


「噂のヴァンパイアって化け物か?」



クレアからは逆光で影にしか見えないのだが、口々に話す男達。その数、三人。
その内の一人が、クレアの上に倒れこんだ男を足で蹴った。


ゴロリとクレアの横に仰向けに転がされた男。
見開いた眼には、最早何も映していなかった。




ゆっくり体を起こしたクレアは、目眩を感じた。

天と地がひっくり返り何度も自分の周りを回る。



(血が足りていない……)



「女は生きてるぜっ」


「でも、金目の物なんて持ってなさそうだ」


「犯して殺しちまうか?」


自分を見下ろし、相談する男達の声をクレアは、ぐらつく頭で聞いていた。




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