キョウアイ―狂愛―
「なんですか???これ」
川の傍でジキルがポケットから取りだしクレアに差し出したのは、金の過剰な装飾が悪趣味なブレスレットだった。
「いや〜。これ良くねぇ?お前に似合いそうだと思って♪」
いましがた子分には、あれ程きつく注意していたくせに……。
(なんて人かしら!?)
クレアが呆れ顔で見上げるとジキルは白い歯を見せ「キシシッ」と笑いを漏らした。
「もうっ……」
まるでいたずらっ子のような悪びれないそんな仕草を見せられると、クレアも苦笑するしかなかった。
クレアはこの盗賊のアジトを何度か逃げ出そうと試みた。
しかし、皆が寝静まる昼間、そっと山小屋を出ると、たいていジキルが外で葉巻をふかしていて、「よぅ」とか、「おぅ」とか、話しかけてくるのだった。
そういう時、ジキルはクレアを責めたりはしない。
只、世間話を二人でするだけ。
それに山小屋の盗賊達は、皆、クレアに親切で、慣れると居心地はいいし情も沸いていった。