キョウアイ―狂愛―
そんな訳でクレアは、盗賊のアジトにかれこれ半月程、居着いていた。
ただ、夜に夢を見る。
盗賊が仕事に出かける夜中、
血だらけのシアンが助けを求め、
サイファが目をギョロギョロ動かし、自分を血まなこで探す。
サイファの冷たい綺麗な指が自分に触れる所で、目が覚める。
たいてい、生ぬるい汗を掻き、呼吸が荒い。
(すぐふもとの街にはアイツの屋敷……)
早くここを去って、もうアイツはあたしの前に現れないんだ、と、安心したい。
そんなクレアの焦りをジキルも気づいていた。
そしてある日の昼間、ジキルは仕事終わりに食事をとりながらクレアにこう言った。
「もう一人のお前と話し合ったんだが……
お前の元住んでいた村、グリーンリーフっつったな?そこに子分を行かせて偵察させてくる」
「えっ?」
クレアが驚いたのは内容よりも『もう一人のお前』という部分。