キョウアイ―狂愛―
クレアは眉を潜め、異形の化け物を見た。
瞳が怪しく光り、口は裂け、表情のない追手達。
―――違う……あたしはあいつらとは違う!
否定するように目を閉じ首を振るクレアは、馬の急な停止にバランスを崩した。
「きゃっ……!」
馬の登る坂に大きな岩があり行く手を阻んでいた。
幸い、ジキルが手綱を強く引き馬を諌めた為、落ちずに持ちこたえた。
しかし、すぐ後ろには追手。
「チッ……」
ジキルは追手と行く手を阻む岩を一瞬見比べたが、
「躊躇するな!一気に登るぞっ」
即座に決意し、「ぉぉおお!」気合いの入った唸り声を挙げ、助走をつけて岩の手前で馬を持ち上げるように手綱を引いた。
ガッ
蹄(ひづめ)が岩に上手くかかり、馬は岩を登りきった。
「ぉぉぉおおっ!お頭の後に続けー!」
それを見た子分達も次々と助走をつけ、岩を登っていく。
その時、
「う、うわぁああーーー」
子分の一人の乗った馬が、脚を滑らせ岩に登りきれずバランスを崩し倒れた。