甘い魔法②―先生とあたしの恋―


「んな顔すんなって」


頭をキャップの上から少し強めに撫でられて、先生を見上げる。

あたしと目を合わせた先生は、安心させるように優しく微笑んだ。


「あいつの『好き』は恋愛感情じゃねぇよ。

ただ兄貴離れができないだけ。ブラコンって言ったのも嘘じゃないし」


秋穂ちゃんに向けた表情とは、別人みたいに優しい顔。

あたしがやきもちを焼いて落ち込んだと思った先生は、それを取り除こうとしてくれてるんだろうけど……。

秋穂ちゃんのあんな態度は、本当にいつもの事なのかな……。

先生は、あの事をなんとも思ってないのかな。


「そうなのかな……」


それだけ返してから、また一つため息をついた。


秋穂ちゃんに言われた言葉が、頭から離れようとしない。


『あなたなんかに、ハルくんの事が分かるハズない』


それは、あまりに的確にあたしの胸の中心をついていたから。


先生とは生い立ちが違うあたしがいくら考えたって、先生の気持ちは分からない。

先生が何かのきっかけで落ち込んで、支えが必要になった時……あたしが支えになってあげられるか、自信がない。


あたしは先生に何度も救われたのに―――……。


秋穂ちゃんの強い眼差しばかりが頭に浮かんで、あたしを責めてるみたいだった。




< 42 / 458 >

この作品をシェア

pagetop