他校の君。【完】
「???」
全然分かっていないあたしに一臣君が呆れたように溜め息を吐いた後、
「立て。帰るぞ」
なんて呟いた。
(え?か、帰る?)
一臣君と?
何で?
ポカンと口を開けたまま動かないあたしに、一臣君がまた溜め息を吐いた。
「電車、あと少ししたら動き出すんだけど?…それとも家に帰る気ねぇの?」
そう言われて、やっと『帰る』と言う意味に気付いた。
一臣君は別に一緒に帰ろうとか、そう言う意味で言ったんじゃない。
ただ単に電車から降りるぞ、って意味で帰るぞって言ったんだ?
「か、帰るます」
意味が分かったあたしは慌てて立ち上がったんだけれど、かんじゃった。
それが恥ずかしくて俯いてしまうと、耳に聞こえた、小さく笑う声。
「帰るますって」
なんだそれ、と聞こえたすぐ後、一臣君が歩き出した。