他校の君。【完】



Side 香澄


あまりの痛さにうずくまっていたあたしは暫くしてから涙目で立ち上がった。

じんじんするおでこを確認する為に、玄関の靴箱の隣に置かれている全身用の鏡を覗き込むと、おでこは見事に赤くなっている。

慌て過ぎて転んだなんて言ったら一臣君に笑われちゃうかも。

赤くなってしまったおでこが見えないように、おでこの方に梳くように指で前髪を下ろしてなんとか隠す。

微かに出ていた涙を指ですくってから、よし大丈夫だと頷いて、ちゃんとローファーを履いて学生鞄を持ち、ソロリとドアを開いた。

こっそりとドアの隙間から覗くとそこには一臣君一人。

お父さんはいない。

ほっと溜め息を吐きながら一臣君をじーっと見つめて一人で勝手にときめく。


(朝一の一臣君だ)


そう思っただけで胸がキュンとする。

おでこは未だに痛かったりする。

このまま見惚れていたいんだけど、いつまでも一臣君を待たせる訳にも行かずに、


「お、おはよう」


ドアの隙間から照れながら挨拶をすると、こっちに視線を移した一臣君が


「おはよう」


爽やかな笑顔を浮かべた。

その笑顔に胸がキュンどころかもう、ギュッてされたみたいになったあたしは


「~~~っ」


一人で激テレ。

こんなに照れてばかりなあたしの身体、持つのかな…。


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