他校の君。【完】



「そう言う冗談いらないから」


きっぱりとそう言うと、


「冗談じゃなくて本気で言ってるんだけど?」


と返されてしまった。

けれど、分かる。

雪が今言ったのも冗談に決まってる。


「…で?何で溜め息吐いてたんだよ?恋わずらいとか?」


ニヤニヤと冗談めかされたけれど、あながち間違ってないかも。

だって、あたし一臣君の事ばかり考えてる。

一臣君の顔を頭に思い浮かべて、あたしはまた溜め息を吐いた。


(一臣君ともっと話してみたいなぁ)


「あんま溜め息吐いてると幸せ逃げるぞ?香澄の兄ちゃんの拓海だってよく言ってるだろ?」


確かに拓海お兄ちゃんがよく言ってるけど…。

あたしの心境なんか全く知らない雪はそう言ってあたしの頭をワシャワシャと撫でる。


「ちょっ、止めてよ!」


髪がぐちゃぐちゃになっちゃうよ…って、へ?

雪、今何て言ったっけ?


「………」


拓海だってよく言ってるって言ったよね…?


(そっか)


そうだよ。

お兄ちゃんに頼めばいいんだよ。

一臣君を紹介してって。

だってお兄ちゃん、一臣君と同じ学校だし。


(ってやっぱりダメか)


お兄ちゃんは野球部だもんなぁ。


一年生で弓道部である一臣君と、二年生で、野球部であるお兄ちゃんと接点なんて無いよ


だから、お兄ちゃんに頼んでも無理だなぁ。


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