Ⅹ(クロス)

Ⅱ. 失われた記憶

波の音・・・

潮の匂いがする・・・

リディアはゆっくりと目を開ける。

所々にグレーのしみがある白い天井。

パイプで作られた硬いベッド。

ベッドの横にある、白い木枠の出窓は少し開けられ、薄いペールブルーのカーテンが風でさわさわと揺れている。

その向こうにあるのは・・・

空?

空が見えているの?

目の奥が痛くなるくらい青い・・・空



ギシッ・・・

不意にフローリングの床が軋む音がして、リディアはハッとして反対側を振り向く。

リディアの寝ている所はベージュのアコーディオンカーテンで仕切られており、その向こうは見えない。


「誰?!」

その言葉を口から出した途端、リディアの体はガタガタと震え出した。
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