Ⅹ(クロス)
「それに、この国の経済と産業に関わる事は、全て私が行う。

それが亡き父上のご意志だった筈。

今更、兄上に口を出されるのは心外というものですよ。 」

フェルナンドは平然と国王アルフレッドを見返す。


「フェルナンド…、確かにこの王国をここまでにしたのはお前だ。

それを否定する訳ではない。

しかし、何故だ?

何故こんな事が起こる?

何故、どこへ行っても人々は苦しんでいる?

何故、今のラドニアには笑顔が無いのだ?」


フェルナンドは大きな溜息をつき、窓の外からリゲルの街を見渡す。


「国民の象徴として、平和と幸せの為だけに尽くしてこられた兄上には、分かりますまいな。

この大国を維持していく事の難しさなど…。」


「それは…」

アルフレッドは言い澱む。






< 63 / 401 >

この作品をシェア

pagetop