君死にたもうことなかれ
懲罰房の鉄扉が外からノックされる。

ややあって、一人の女性兵士が入室して来た。

背中まで伸びた長い髪、温和な表情。

迷彩服を身につけてはいるものの、とても軍属とは思えない、優しい雰囲気の女性だった。

「殴られたのに手当てもされないまま懲罰房に入れられてたからね」

彼女はそう言って、ヒョイと救急箱を持ち上げて見せる。

「御手洗少佐の指示よ」

「……」

俺は特に表情を変えるでもなく彼女を見つめる。

「あんたは衛生兵なのか?」

「ほらぁ、またそんな口の利き方」

彼女はガーゼに染ませた消毒液を、俺の顔の傷に、少し乱暴に押し付ける。

それが沁みて、俺が少し顔をしかめると、女性はクスクスと笑った。

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