君死にたもうことなかれ
言われるままに食堂の隅を見る。

…窓際の席で、一人食事をする女性の姿があった。

藍色の長い髪をポニーテールにした女性。

切れ長の目、長い睫毛、透き通るほど白い肌、整った顔立ち。

美人の部類ではあるが、その雰囲気はどこか他人を寄せ付けないものを感じる。

あの人が、白夜・エメリッヒ・タチバナ大尉。

思ったよりもずっと華奢で、小柄な女性だった。

「彼女は日本とイタリアのハーフでね、イタリアの実家は名門の軍人一家なんですって。父方の故郷である日本がこんな状況になったのを知って、義勇兵になったそうよ」

舞姫が彼女の簡単なプロフィールを教えてくれる。

名門の軍人一家か…。

生まれも育ちも俺とは違う、生粋の戦士。

道理で強い訳だ。

そんな事を考えながら、俺は遠巻きに白夜大尉の姿を見ていた。


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