漆黒シンデレラ


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「た、たーまきちゃんっ!」


俺は加賀美がいなくなった瞬間、環ちゃんに抱きつかんばかりに声をかけた。若干どもってしまったのは最近流行のオトメンということにしてほしい。


だだ、だって……俺大胆なことできないし。いやいやいや…背徳感を味わうようなことは一人でしたことあるけれど。



「あれ?はー君じゃないの。どうかしたの?」



Tシャツにジーパンだけの姿だけで、どうしてこんなに可愛いのかな?!

今日も黒い瞳が可愛いんだけどぉぉ!!



「え、えっと……あの……。か、加賀美達と、ご、ご飯」

「何でそんなに吃っているの〜」


可愛く笑う環ちゃん。合コンなんてやっていたことなんて知られたくない…。


(相変わらずはー君、格好良いな…。私の穢れが浮き彫りに…)

(俺は環ちゃんだけだからねっ!)


「………はー君、合コンだったんでしょう?はー君、必要ないよね?」


「えっ?」



急に陰りを見せた環ちゃんの瞳に俺は戦いた。

良いんだ。これで、良いんだ——。憎しみでも怒りでも、何でも良いから俺のことを覚えていて欲しい。



その感情に抗わないよ。



まるでエポニーヌみたいだな。自嘲を浮かべた俺はことなげに「レ・ミゼラブル」のミュージカルを思い出した。

エポニーヌは、青年マリウスへの一途な愛を貫き、たとえ報われなくとも彼のためにすべてを捧げるという生き方を通した少女だ。

まるで俺みたいだと幼いながらも感じてしまった。




(俺の最後も、エポニーヌのようになってしまうのか)

 
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