(短編)フォンダンショコラ
会って、何を話せばいいのだろう。


昨日作ったフォンダンショコラを家に持ち帰って、ラッピングしたそれを見ながら、私はそう考えていた。


実際、顔を見てしまったら、うまく話すことなど、出来ない気がした。

話さなきゃいけないことは、たくさんある。
でもそれを、どうやって正確に隼人に伝えればいいだろう。


隼人からしたら、私は勝手な女でしかないかもしれない。


あんなに大事にしてくれた人に、離れたいなんて・・・、最低なことを言ったのだから。


それに今でも好きだなんて・・・、どうやったら信じてくれるだろう。


気持ちは、固まっている。目の前にある、もう二度と作らないと決めたこれを作ったのも、一つの決意の現れだった。


でも届かなかったら・・・。

ううん、それ以前に会えなかったら・・・。



そうしたら、

そうしたら、





もうこの恋は、封印しよう-------。






私は、そう決めて、眠りについた。




隼人とは、果たせなかった約束がたくさん残っている。


4年前、まだ付き合いたての夏、私は誕生日を迎えた。お金がなくて、彼はプレゼントを私に用意できなかった。代わりに、コンビニで買った小さなケーキを二人で分けて、来年の誕生日のプランを語り合った。

私は、ペアリングが欲しい、と言った。彼氏が出来たら、お揃いのものを身につけるのが夢だった、と。

隼人はそれを聞いて、嬉しそうに笑って、「絶対買ってやる。どんなデザインがいいか考えとけよ?」と言った。


クリスマスには、まだ未成年の私に、隼人は「来年こそは一緒に酒飲もう。」と言った。


バレンタインデーには、「来年は、絶対14日空けとく。」と言った。

ホワイトデーには、一緒にディズニーランドにいきたい、と話した。

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