(短編)フォンダンショコラ
別れる2週間前には、「今度水族館行こうか。」と、夜遅くの電話で話した。


いつも、いつも、隼人は私がいると、嬉しそうに笑った。

隼人は、私が言う一言一言を、楽しそうに聞いてくれた。

どんな私も、本当に、愛しそうに見つめてくれた。





いつも隼人は、私との未来を、語っていた。





彼の前では、全て許されたような気になった。
自分が嫌いだと思う自分も、好きになれるような気がした。


彼だけにしか抱いたことのない、こんなに素敵な感情を、どうして忘れていたんだろう。




会いたい。

会いたい。


会いたい。




隼人に再会する前の私には、もう戻れないよ。
一人でも平気だった現在(いま)には、もう戻れない。




隼人に会いたい。




みっともなくてもいい。

ただ、伝えたいから。




だから、お願い。




隼人にもう一度、会わせて・・・!!














神にもすがるような気持ちで、私はそう祈った。

その時だった。


「隼人お前、チホとのことどうすんだよ~。」


隼人、チホ・・・?


知らない男の人が、よく知った名前を口にしているのが聞こえた。

もしかして・・・っ。

恐る恐る、私は目を開けて、門の中を覗き込んだ。

「チホには悪いけど、やっぱり受け取れねえから。」


やっぱり・・・!


私の目の先には、私の知らない男の人二人の真ん中に挟まれて歩く隼人の姿があった。


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