悲愴と憎悪の人喰い屋敷
「そういえば、『扉が開けれる』とも言ってたよな?どういう意味だったんだ?」

聞かれると予想していたのか、望月は立ち上がると窓辺へ行く。
小さく手招きをされた俺は、首を傾げながら望月の傍に行った。

「窓を開けて下さい」

「開ければ良いのか?」

何の実験だと思いながら、俺は鍵を開けて窓ガラスを上に押し開ける。
外の雨は小降りになっていて、噴水の音だけが大きく耳に届く。

「それじゃ、閉めて下さい。もう一度、僕が開けて見ます」

言われたとおりに窓を下へ戻して閉め、望月に場所を譲る。

「鍵は開いてますよね?見ていて下さい」

望月は微笑んで言うと、さっき俺がしていたように窓ガラスを上に押し上げた。
しかし…、

「え?」

鍵は開いているのに窓ガラスは少しも上がらない。
悪戯をしているのかと言いかけたが、望月の指先が白くなっている事から力一杯開けようとしているのは明白だった。
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