悲愴と憎悪の人喰い屋敷

そして、二人の姿が奥に消えた時、景色が霞む。
眩しい光に思わず目を瞑り、次に目を開けた時には俺はベッドに居た。

「夢……だったのか？」

今見た光景を思い出して上体を起こし窓の外を見る。
雨音が微かに聞こえ空も薄暗い。
眠りについてから、さほど時間は経っていないようだ。
一体、今は何時ぐらいなんだろう？
確かカバンのなかに腕時計が入っていたな。
時間を確認したい俺は、ベッドから降りて鞄の元へ向かう。

「！」

その時、扉の前に誰かが居たような気がして俺は弾かれたように振り向く。
しかし、振り向いた先の扉には誰もいない。
扉の鍵を確かめて見たが、ちゃんと閉まっている。
やっぱり気のせいだったか。
胸を撫で下ろして鞄の方を振り返ろうとした時、横に人の視線を感じた……。