悲愴と憎悪の人喰い屋敷
「それより、もう一枚タオルをくれないか?三浦も濡れているんだ」

「え?三浦?」

そこで初めて三浦の存在に気が付いた樋口は俺の後ろを覗く。

「あ…お、遅くなりました」

三浦が小さく会釈すると、樋口は今までの態度を一変して口をへの字にする。

「ちょっと、待ってな」

吐き捨てる様に言った後、樋口は踵を返す。
その様子に首を傾げて俺は頭にあったタオルで、三浦の髪を拭く。
すると、三浦は苦笑して俺の手を止めた。

「だ、大丈夫です。そのタオルは樋口先輩が北川先輩に用意したものですから」

「あいつと仲が悪いのか?」

樋口の態度から俺が確信して聞くと、三浦は俯いて言う。

「理由は解りません。けど…僕は樋口先輩に嫌われているんだと思います」

「何かされたのか?」

俺の見ていない所で酷い苛めにあっているのではと、不安顔で聞く俺に三浦は慌てて首と手を振る。

「いいえ!ただ、口を聞いて貰えないだけです」

「そうか…」

樋口に直接、理由を聞いてみたい気もするが余計に三浦の立場が悪くなるよな。
どうしたものかと悩んでいると、走って来る足音が聞こえてきた。
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