PURELOVE
体が勝手に震えて、冷や汗が出る。


「…………うん」


一言そう言うのが精一杯だった。


すると……


楓君は、いきなりあたしを抱き締めた。


…………えっ!?


一気に頭が真っ白になる。


「…お前には俺がいるから。1人で我慢すんなよ…」


楓君の声がすぐ近くから聞こえて…


しかも、体は驚くほど密着していて…


何が何だか分からなくなった。








少し経って、ようやく楓君の言葉の意味を理解した。


楓君の体温も声も何もかもが心地よくて、その時には体の震えが止まっていた。


「………ありがとう。」


楓君の存在の大きさを改めて実感しながら、小さく呟いた。


「………よし!」


突然楓君はそう言うと、そっと体を離した。


そして、クルッと背中を向けてこう言ったんだ。


「ほら、行くぞ。……美鈴」


楓君の左手があたしに向けられている。


その行動とセリフにビックリして、楓君の顔と手を交互に見た。


“美鈴”


確かにそう言ったよね?


あたしの勘違いじゃないよね?


聞き間違いじゃ…ないよね!?
< 210 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop