PURELOVE
……ねぇ、彩花?


彩花は間違ってたみたいだよ?


だって、ほら…。


目の前で、楓君が“立川”じゃなくて、“美鈴”って呼んでくれたんだもん。


王子様は、ちゃんとあたしの考えてることを分かってくれたよ?



最後にもう一度、楓君を見る。


相変わらず顔は背けたまま。


だけどね…


ちょっと横にズレれば、分かるんだよ?


その顔が少し赤いのが…。


あたしはさっきのことなんて忘れたみたいに笑って、ちょっと戸惑いながらそっと右手を重ねた。


彩花は、ただ一緒にいるだけじゃ恋人とは言えないって言ってたけど……


多分、あたし達には当てはまらないよ?


あたし達にはあたし達のペースがある。


人が、同じ顔と心を持っていないのと一緒だよ。


二人が同じ気持ちでいれるなら、無理に焦らなくていいと思うな。


キスなんて、今のあたしにはまだ考えられない。


だけど…


今日みたいにきっと未来も、楓君があたしを正しい道に連れていってくれるから…


だから、今はこのまま。


このままの関係がず~っと続けばいいな。
< 211 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop