さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「え、なんで」
真摯なまなざしは、到底冗談とは思えない。
「なんでもだ。
リア国では、ここ何年か王に逆らう者を影でほおむっているという噂がある」
レイラの両肩に手を添えると、サジは囁く。
小さいが、鋭い声。
だが、レイラには彼の忠告の意味が理解できない。
それは、まるでソリャンを非難しているように聞こえて。
「そんなのただの噂でしょう?
ソリャン様から聞いたわ。
レイラ姫が行方不明になって以来、王様が人間不信になったって」
庇おうという意思が働く。
両者の間に誤解があるなら、解いたほうがいいに決まっている。
だが。
「そうかもしれない。しかし、危険な目に合ってからじゃ遅い。
君の家族も、ひょっとしたら今頃」
「え?」