さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
驚いたユーリが目を丸くする。
「いや、でも結局俺は何にもしてないし。
逃げる計画をたてて実行したのだって、カマラだろ?
俺は全然間に合わなかったわけで」
「いいえ。あなたが来なかったら、多分父は死んでたわ。
私は躊躇せずに火を放ったのよ。
父は足が悪くて、逃げられないのを知っていたのに」
ブルルッと馬がなき、カマラは自分が乗っていた馬の顔を抱えるようにして撫でた。
「君も一緒にいればよかったのに」
カマラの父と仲間は、レガ国内で保護されている。
だが、カマラだけはその場にとどまる事を嫌い、ユーリたち一行についてきた。
「冗談でしょう。
国王から命令を受けるほど身分が高かろうが、
あなたのような弱い男に大事な妹を任せられないわ」
泣いているのかと思ったカマラの瞳は、磨かれた刃の切っ先のように強い光を放つ。