さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

国境は船で越えるほうがはるかに楽だ。

途中まではレガ国民の漁師として、その後はリア国民の商人として。


漁民のものと思われる船に乗り込んだのは、カマラを入れて20人ほどだ。


兵士と一緒にユーリの説明を聞きながらも、

俯いたカマラの心はここにはなかった。


ユーリたちには秘密にしてあること。


それは、幼い頃に見た、奇妙な父の姿。


国王直属の兵士のみが着用するという、太陽の模様が入った服。

それを着たユーリたちを見たとたん、塞がれていたカマラの記憶の扉が開かれた。


小さな赤ん坊を抱いた父。


おぼろげなその光景は、夢か現実か区別がつかぬほどの遠い記憶だ。


父が着る緋色の衣にある模様と同じものが、レイラの足にあると知っても、

幼い自分にとっては大して意味のあることでもなく、

すぐに別の記憶に埋もれてしまった。



< 159 / 366 >

この作品をシェア

pagetop