さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「思い出させて申し訳ないけど、君の口から昨夜の事を訊きたいんだ。
相手の顔は見なかったと聞いているけど、本当かい?」
その問いに、レイラは頷くしかなかった。
暗かったのもあるが、頭全体を布で押さえつけられていたので、
まったく相手の顔を見ていないのだ。
無我夢中で腕を引っ掻いた覚えはあるが、
それも痕になっているのかどうかわからない。
「すみません。いきなりだったから」
息ができない感触を思い出して、レイラは俯いた。
「あぁ、違うんだよ、レイラ。
君が覚えていないのも無理はない。責めているわけじゃないんだ。
ただ、手がかりが何もなくてね。
どうやってレイラの部屋に入り込んだのかもよくわからなくて」
そう言ってから、ソリャンはふと空を見上げてから、サジに視線を移した。
「そういえば、サジ。君はどうやってレイラの部屋に入ったんだい?
部屋の前には兵士がいたはずなんだが」