さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
ほら、と言って明かりを持ち上げた左手を、右手で指す。
カマラは柳眉を逆立てかけたが、あきらめたように肩の力を抜いた。
「静かにしてちょうだい。多分、ここから先は完全に城の建物内よ。
壁の厚みがどれくらいかわからないけど、大きな声は出さない方がいいわ」
なるほど、道がわずかに傾斜し地上へと続いているらしい。
行きましょうと、つま先を返したカマラの肩を、ユーリはぐいと引き止めた。
「ちょっと待って。ここで少し休憩しよう。
今朝は歩き通しだ。ここからは慎重にいかないと」
そう言うとユーリはもう一人の男に目配せする。
「ナリ。悪いけどちょっと先を偵察してきてくれないか?」
「それなら私が」
「いや、ナリの方が適任だよ。
彼は体力があるし、隊の中でも無口で知られるからね。
疲れで判断が鈍ったら困る。俺たちには休息が必要だよ」
確かにそうだ、とカマラは思った。
さっきまでなんとも感じなかったが、一度立ち止まると、足が鉛のように重い。