さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
ナリは軽く頭を下げると、ゆっくりと坂道を登って行った。
心なしか、二人を見ないように去っていたような。
カマラは隙なく歩を進めるナリを見送りながら、
なんとなく隣にいる男の思惑に巻き込まれている思いを拭えなかった。
その男はといえば、床に座り壁にもたれかかったカマラに、
屈託のない笑顔で水のみを差し出している。
抵抗する気にもなれず、カマラは素直にそれを手に取った。
水を口に含むと、自分の喉がどれほど渇ききっていたかを思い出す。
あっという間に水のみが空になると、はぁ~と腹の底から声が出た。
「わざわざ二人きりにして、何かたくらんでるわけ?」
「するどいね」
「先に偵察に行かせる必要なんてないもの。私はこの先の構造も頭に入ってるわ」
カマラはもう一度用意していた筒から水を汲んで、今度はちびちび飲み始める。
足の裏がひどく熱をもっている。
冷やそうか迷って、やめた。この先すぐに脱出できる保証はどこにもないのだ。