さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
頭の中が真っ白になる。
進むことも戻ることもできない。
完全に迷子になってしまったのだ。
体の中が、かっと熱くなって目が回る。
だが、いつまでもこのままではいられない。
レイラは意を決して床の上に滑り出た。
ここが誰の部屋かわかれば、もう一度地下通路を通って自分の部屋へ戻れるかもしれない。
息をとめて全神経を耳に集中する。
寝台の下などという出入りしづらい場所に、隠し扉がある理由がわかった。
きっとこうやって、部屋の様子を窺うためだ。
レイラが床に張り付いてすぐ、人の歩く足音と話し声が近づいてきた。
「どうやらうまくいったようですね」
「まったくじゃな」
一人は落ち着いた女の声。
もう一人はしゃがれた男の声。
どちらもどこかで聞き覚えがある。