さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
その大きな背中が笑ったように見えた。
カマラは前を向いて必死に走り出す。
後ろを振り向くことはしなかった。
ナリは瞬きもせず、距離を詰めてくる男に飛び掛る瞬間をねらい定めていた。
明かりももたず歩いてくるとは、相当に慣れているのだろう。
だが、幸い相手は一人のようだ。
自分がやられれば、次はユーリだ。
それだけは防がねばならなかった。たとえ命に代えても。
「あ!」
短い音を出したのは、ナリではなくユーリだった。
気配は消している。けれど、この感じはよく知っている人物のものだ。
それに応える様に、目前に迫った男が女を虜にする魅力的な目を眇めた。
「ちょっと遅すぎだぞ、ユーリ」
銀色の髪が炎に揺れて、光った。