さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「太陽をあらわす印。跡継ぎとして、王が認めた人間につける刺青さ。
つまり、君は、正統な王位継承者ってわけだ」
不意に、ソリャンの顔から笑みが消える。
笑みだけでなく、いっさいの感情を排除したような無表情。
「僕にはないんだけどね」
膝をつき、レイラの足に鼻先をつけるほど近づくと、
ソリャンは、刺青の細かい模様を追うように爪でなぞった。
「僕には、ないんだ」
もう一度、繰り返す。
なぜだかそれが泣いているように思えて、
「ソリャン様・・・」
レイラはソリャンの名を呼んだ。
様をつけるレイラに、ソリャンはふっと揶揄の笑みを刻む。
「まったく。ミゲルのやつ、どうして君を殺さなかったのかな。
おかげで、君をもう一度殺さなくちゃならない。
君の事、本当に気に入ってたのにな」
ソリャンはレイラの顎を人差し指で引っ掛けるようにして、
自分と視線を合わせた。