さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

王が調べれば、自分がジマールの娘でないことはすぐに証明されるだろう。

だが、その後はどうなるのか。

自分が替え玉だとわかってもらえたとしても、父が助かる保証はない。

むしろ、王に話したとたん、それを知ったジマールに家族全員が殺されてしまうだろう。

しかも、盗賊の罪を着せられているのだ。

無事にジマールの手を逃れて生きのびることができたとしても、今度は王の手により縛り首になる可能性だってある。


レイラは背筋を震わせると、王への告白というアイデアを否定して、ため息を落とした。


その時、馬車の扉の取っ手が、ぐるりと回転し、明るい声が響いた。


「レイラ様。着きましたよ」


物思いにふけっていて、レイラは扉が完全に開け放たれるまで気づかなかった。


すみません、と言いながら馬車から顔を出す。

男は少し不思議そうな顔をしたが、すぐに、どうぞと言って手を差し出した。


「あ、ありがとう」


太陽が森の中に埋もれてく。

思ったよりもずいぶんと時間がたっている。


「今日は、こちらで宿を取りました。

良くお休みください」


< 33 / 366 >

この作品をシェア

pagetop