さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
王が調べれば、自分がジマールの娘でないことはすぐに証明されるだろう。
だが、その後はどうなるのか。
自分が替え玉だとわかってもらえたとしても、父が助かる保証はない。
むしろ、王に話したとたん、それを知ったジマールに家族全員が殺されてしまうだろう。
しかも、盗賊の罪を着せられているのだ。
無事にジマールの手を逃れて生きのびることができたとしても、今度は王の手により縛り首になる可能性だってある。
レイラは背筋を震わせると、王への告白というアイデアを否定して、ため息を落とした。
その時、馬車の扉の取っ手が、ぐるりと回転し、明るい声が響いた。
「レイラ様。着きましたよ」
物思いにふけっていて、レイラは扉が完全に開け放たれるまで気づかなかった。
すみません、と言いながら馬車から顔を出す。
男は少し不思議そうな顔をしたが、すぐに、どうぞと言って手を差し出した。
「あ、ありがとう」
太陽が森の中に埋もれてく。
思ったよりもずいぶんと時間がたっている。
「今日は、こちらで宿を取りました。
良くお休みください」