さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
手を握られたまま、金髪の若い兵士に微笑まれる。
頭を下げて歩き始めたレイラは、ふっと周囲の兵士たちに違和感を感じた。
いつも真っ先に自分に近づいて、他の兵士と自分を隔離する、
あの隊長が見当たらない。
「あ、あの。隊長はどちらに?」
必要以上に会話をすれば、自分が本物の「レイラ」でないことが明るみに出ると、どんな難癖をつけられるかわからない。
レイラは自分の手をとったままの兵士に耳打ちする様に小さく囁いた。
「隊長は急用で、代わりに私がレイラ様のお世話を命じられました。
ユーリと申します」
兵士は柔らかい笑みを浮かべ、レイラを真正面から見つめると、軽く頭を下げた。
レイラは、「よろしくお願いします」、と言葉を告げたものの、釈然としなかった。
やはり何かがおかしい。
あれだけ他の兵士との接触を嫌っていたのに、兵士自らに名前を名乗らせるなんて。
歩きながら、そろりと周囲を見回す。
・・あの太った兵士もいないわ。その隣にいた背の低い兵士も。
目が合わないように兵士の顔を見ないようにしていたせいで、どんな顔をした兵士がいたかはほとんどわからなかったが、
二人の兵士の体型には記憶があった。
あまりに正反対な体型の兵士が並んで馬に乗っていたことが、妙におかしかったからだ。