さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

その女から紡ぎ出された言葉であるというだけで、それは男の心に深く響いた。

王の命令で、形だけ迎えて逝った妻とは違い、

産まれて初めて男の情熱に火をつけた女の、

最初で最後の願い--。



・・王は、すべてを知っていたのだろうか。



城から出た男は、ときおりそんなことを考えた。

考えても詮無きことだとわかっていながら。


女の言葉を守るためかどうか、

王は産まれてまもない王女を跡継ぎに据えるため、

王家の焼印を押す儀式を秘密裏に行った。


男は、表向き王の護衛兵ということであったが、

実際は剣の腕を見込まれて裏の仕事を任されるようになった、ただのごろつきだ。

王の決断に口をはさむ権利など、あろうはずもない。


< 351 / 366 >

この作品をシェア

pagetop