さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
その女から紡ぎ出された言葉であるというだけで、それは男の心に深く響いた。
王の命令で、形だけ迎えて逝った妻とは違い、
産まれて初めて男の情熱に火をつけた女の、
最初で最後の願い--。
・・王は、すべてを知っていたのだろうか。
城から出た男は、ときおりそんなことを考えた。
考えても詮無きことだとわかっていながら。
女の言葉を守るためかどうか、
王は産まれてまもない王女を跡継ぎに据えるため、
王家の焼印を押す儀式を秘密裏に行った。
男は、表向き王の護衛兵ということであったが、
実際は剣の腕を見込まれて裏の仕事を任されるようになった、ただのごろつきだ。
王の決断に口をはさむ権利など、あろうはずもない。