さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

ごくりという音と共に、ユーリの喉仏が上下に動く。


「お、俺?」


指で自分を指し示すが、サジはそれを無視して立ち上がる。


「明日は早い。もう寝るぞ」


一人でするりと寝台にもぐりこんでしまった。


「ちょっと待てよ!」


「こっちは私一人で大丈夫だ。助けたら連絡しろ」


壁を向いたサジの背中に、ユーリはため息を浴びせる。


「あ~、はいはい。わかったよ。

も~、ほんと昔っから言い出したら聞かないからなぁ。


あ~、ついてない。俺、剣の方はからっきしなのに」


剣“も”だろう、といういらぬ返事に、

ユーリはその声の主の背中を思い切りにらみつけた。


発散できないもやもやを打ち付けるように、

反対側においてある寝台に、勢いよく飛び込む。


ギシと寝台が沈む音がすると、うるさいぞ、という音楽が流れた。



(つづく)






< 49 / 366 >

この作品をシェア

pagetop