さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~

起こしてくれれば良かったのに、とレイラは思うのだが、

なぜかサジは彼女が目を覚ますまで、部屋には入ってこなかった。



・・怒っているわけではないのかしら。



凛とした眉も、不思議な瞳も、

動く事を忘れたかのように、いつも定位置に座していて、形が変わることもない。


わずか半日前に、声をあげて笑っていたとは思えないほどだ。


「ユーリさんの姿が見えませんけど」


「あいつは、ちょっと野暮用で出かけている」


「そう、ですか」


横に並んで立っているのに、話はそれだけで途切れた。


ユーリになら、話しかけやすそうだったのだが、

サジ相手では思いを口にしづらい。



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