さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
やけに楽しそうに、兵士はうんうんとしたり顔で頷く。
自分に気があると思っていた侍女が、
実はサジと話がしたくて自分に近づいた事を、恨みに思っていたりはしない。
自分はそんな小さな男ではない。
出発のご命令をお待ちしま~すと、
兵士は上機嫌で、かわるがわる片足で軽くとびはねながら去っていった。
「・・・」
サジは兵士の背と馬車の扉を交互に見た。
が、特に何の反応もなく、腕組みをしたままその場に立っていた。
彼の心配は、予定通りリア城に着けるかということに絞られていた。
予定通りに行かなければ、一日到着が遅れた理由を、
リア国王とジマールのそれぞれに説明しなくてはならない。
それくらいで計画が失敗することはないだろうが、
できるだけ危険な道は避けたかった。
ユーリの方は、うまくいっているだろうか。
サジは、大事な友が日も空けきらぬまえから馬を飛ばした方角に、そっと目をやった。