さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
どうしてよいかわからなかった。
ソリャンの言葉に従わず、俯いたままでは失礼に当たるのか。
それとも言われたとおり顔を上げれば、なお王の怒りに火を注ぐのか。
冷たくなったレイラのか細い指先を、
ソリャンは勇気付けるように再び強く握り締めた。
そのままレイラの耳元に唇を近づけると、
鳥が歌うように軽やかにささやく。
「大丈夫。顔をあげてごらん」
誘われるまま、レイラは静かに面を上げた。
太陽をすかしたような薄い金の髪。
森を連想させる豊かな緑の瞳。
歳はレイラよりも少し上に見える。
「よろしく。レイラ」
人懐っこい笑顔を向けられ、つられてレイラも微笑んだ。
気難しそうな王に比べ、自分の夫となる王子は、
柔和そうな印象を受ける。
レイラは幾分安心したが、そのすぐ後ろにいるジウチの渋面が視界に入り、
慌てて俯いた。