さらわれ花嫁~愛と恋と陰謀に巻き込まれました~
「レ、レイラと申します。
不束者ですが、どうぞよろしくお願いいたします」
上段から、舌打ちの音が響く。
この場でそんなことができるのは、城の主以外にあるまい。
やはり許してもらえないのかと死にそうな気分になったが、
ジウチの関心はすでにレイラにはないようだった。
「もうよい。ソリャンが気に入ったのなら好きにするがいい。
兵には一日の滞在を許す。
帰ってジマールに滞りなくすんだと説明しておけ」
王が椅子から立ち上がる音がした瞬間、
「お待ちください!」
ひげを生やした兵士が思わず声を上げた。
レイラの右斜め後ろに控えていたその兵士は、
ジマールの信頼厚い隊長、を演じているサジの部下だ。
「どうか、レイラ様が慣れるしばしの間、
我々の滞在をお許しいただけませんか」