HIGH-WEST
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 2時間後。巡礼者を聖地まで送り届けた2班の残りと3班は医務室に向かっていた。待ち合い室からはイヌの怒鳴り声が外まで聞こえて来る。(完全にキレてるよ)いつも冷静なイヌが声を荒げたところなど2班の面々は見たことがない。待ち合い室に入った一行が見たのはウマの胸倉を掴み上げて怒鳴り散らすイヌの姿だった。その様子を見てトラとヒツジが視線を交わす。(そろそろ止めた方がええよな)(ああ、なんか物騒なこと言い出さんうちに)(誰が止めるん)(そりゃやっぱりお前やろ)(俺!?)(ほかにあの状態のイヌを止められる奴おらんやろ)(…。)
 その間にもイヌの怒りのボルテージは上がって行く。
「なんか言えやコラ!助けに行った仲間に傷負わす奴がどこにおんねん!!」
ふて腐れたような顔をしてウマは黙っている。
「何考えとんねんお前は!!!」
イヌの血管は今にも切れそうである。潮時と見たトラが横からすっと手を伸ばし、イヌの手を押さえた。
「もうそれぐらいにしとけ今こいつに何言うてもしゃあないやろ。」
怒りが一気に冷めたイヌは手を下ろした。ホッと胸を撫で下ろす一同。だが次のウマの発言に皆一斉に背筋を凍らすこととなる。
「普通あれくらい避けられるやろ。だいたいシマウマやったらあれくらいの攻撃避けとるで。」
思わず耳を疑うヒツジ。目を吊り上げるウサギ。下ろしていた拳を振り上げるイヌ。慌ててイヌを止めるトラ。全員が戌に気を取られていたが、本当に危険な奴は後ろにいた。
 不意に一筋の光がウマの方へ伸びて行った。

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