ハニードハニー
1.決心することは簡単で
 昔から歌うことが好きだった。

 自分の部屋で歌ったり誰もいない教室で歌ったり。

 人前で歌うのは恥ずかしいからこっそりと。


 いつかの学校の帰り道。

 太陽がだいぶ傾いていて辺りをオレンジ色に染めていた頃だった。

 周りに歩いている人が誰もいないことを確認して、いつものようにこっそりと鼻歌程度に歌っていた。

 今日はよく声が響くなあと考えながら、夕日によって出来た自分の影を見る。

 髪や鞄が上下に動いていてずいぶん上機嫌に歌っていることに気付いた。
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