ハニードハニー
「あっ、ひ、雛です」


 私はさっきあった事を捲し立てるように一気に話す。

 今日も学校の帰り道に一人でこっそり歌っていたこと、そうしたら人に聞かれていたこと、そして歌手にならないかと言われたこと。

 要点はそれだけなのにまとまらない頭では、ぐしゃぐしゃに話すことしかできなかった。


「………」

『………』


 一方的に話し終わった後、沈黙が現れてしまった。

 その沈黙が何か嫌で話を切り出そうとしたら、電話越しに笑い声が聞こえた。


「ちょっとどうして……っ」


 どうして笑っているのか、聞きたくなったけど我慢した。

 彼が笑うことはいつもの事だから。

 そしてその笑った後に進むべき道を誘導してくれるのはいつもの事だから。
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