花は踊る 影は笑う~加賀見少年の非凡なる日常~

 小梅とは小学校で知り合って以来の中だが、綾人は小・中学は別のところに通っていたため、高校に入るまでこんな従兄がいるのは知らなかった。
 綾人のほうはといえば、時々小梅の実家にも遊びに行っていたらしく、そこで千歳の写真を見て顔を知っていたらしい。
「まあまあ。そんなに邪険にしないでよ。将来は家族になる仲じゃないかー」
 そう言いながら千歳の隣に回りこみ肩を抱き寄せる綾人をキッと睨む。
「いや、小梅と家族になってもお前と家族になるわけじゃないし。せいぜい親戚だろ? そもそも俺と小梅が一緒になれるかどうかもまだわからないし……いや、それは絶対なるけどね」
「ちーちゃん、何になるの?」
 密かな決意を口にしたところで背後から聞こえた声に、千歳は思わず硬直する。
 綾人に肩を抱かれたまま首だけ捻って振り返れば、ふわふわとした笑みを浮かべて、弁当包みをスカートの前に揃えた両手で持つ小梅の姿があった。
「いやっ……何でもないっ。えと……あ。もう昼休みじゃん。おなか減った。うん、減ったよなっ」
 綾人の腕から頭を擦り抜けさせて逃れると、今度は逆に綾人の頭を抱え込み、無理やり頷かせる。

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